プールは要らない

お風呂で、たったが言った。

「パパぁ、ぼくまたプールに入りたい~」

「入ればいいじゃん。学校のプール」

「そうじゃなくて、おうちで」

「ごめん、それは勘弁して」

「なんでぇ~」





なぜかと言えば、ゆめがおぼれたからだ。


たぶん、家でプールを出せば、必ずまたフラッシュバックを起こす。
僕にとっては、あの日の出来事はまだ少しも過去になってない。
たぶんまだ、耐えられない。

「あの日、おまえはばあばんちに行ってていなかったじゃん。きっとおまえがいてくれてたら、ゆめはおぼれなかった。なぜなら、おまえが気がついて助けてくれたろうからな。」

「うん」

「なんでたったがいなかったのに、ゆめを入れたんだろうとか、パパは自分を責めてるわけ。わかる?」

「う~ん・・わかんない」

「わかんなくて良いんだ、今はな。きっとおまえにも子供が生まれたら、半分くらいわかるよ。でもな、あのときパパが感じた恐怖とか、苦しさやつらさを全部わかることはできないんだ。
いまだってなぁ、思い出すと、なんでプールなんか入れちまったんだ-・・・うぎゃ~~~ってなるんだよ。
この気持ちは、子供がいるって言うだけでは、全部理解することはできないし、仮におまえの子供がゆめみたいな障害者だったとしても、ただそれだけではやっぱり全部は理解できないんだよ。」

「じゃぁ、ぼくもう、二度と、プール入りたいって言わないようにするね」

「なんで?」

「それはねぇ、ゆめちゃんのため!パパが悲しいこと思い出さないように!」

「ゆめじゃなくて、パパのためだな。へ~~、優しいジャン。ありがとうよ」

「へへへ」




という会話がありました。

僕はずいぶん、たったに助けられてるなぁ。


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