学生の頃は結構けんかっ早くて、生傷が絶えなかった。
たまに帰省すると、もういけない。
毎日けんかけんか。
いい年して、なにやってんだかって感じだ。。。。
奴と初めて会ったのは、大学2年の頃だったかな。
我が家は、中学の頃の友人や親父の元弟子、現弟子、そういう連中がいっつも出たり入ったりして一緒に飲んだり食ったりしてた環境。
帰省したとき、あいつもその中に混じっていた。
だいたいが初めて会ったときからいけすかねーって思ってたんだ。
なんか目つきがすごく悪くて、顔つきも般若みたいな風。
いっつも人をバカにした態度で、へらへら笑ってやがる。
そのくせ法事なんかあると一緒に同席しやがって。
普通さー、そういう席には来なくない?
神妙な顔をときどきみせるのも気に入らなかった。
あつかましい・・・
そんな奴が近くでうろうろしてたんじゃあ、落ち着いて飯も食えん。いつか決着を付けてやると、たぶんお互いに思ってた。
そして、その日は突然にやってきた。
ちょっと遠くのモスバーガーまで行って、新作のバーガーといつものバーガーの二つを買って、ほくほくで帰宅した。
さあ食べようという段になり、パッケージを開けたところでなんかの用事で席を立ったんだよな。
用事をしている最中に、あの野郎が玄関から入って来た気配がした。
何で飯時に来やがるんだ!
そして、戻ってみたら、俺のバーガーがない!!!!
辺りを見回すと、
いた、あの野郎!
俺のバーガー食ってる!
しかも、俺をにらみつけやがって!
そのままバーガー食いながら出ていこうとした。
時は満ちた。
いざ決着の時。
「ちょっと待て、おめぇー!」
はっきり言って、奴は体がでかい。力も、俺よりも強い。
でも、もうどちらが上か、はっきりさせる時期なのだ!
俺は戦った。
何カ所か、血も出た。
大の大人が大げんかだ。みっともないったらありゃしない。
結果、俺は勝った。
服は裂け、思いっきり蹴られた拍子にあちこち打撲もあった。
「ボスは俺だ!覚えとけ!」
奴は、しおらしくうなだれていた。
こっちは多少は加減したんだ、ケガはないはず。ありがたく思え。
以来、奴は俺には絶対服従の子分になった。
そうなってからは、俺もずいぶんとかわいがってやった。
奴の中では、たまにしか帰ってこないにもかかわらず俺がこの家でNo.1となったようだ。
毎日親父に散歩に連れてってもらってるくせに、俺の言うことは絶対にきいた。
お手もお座りも伏せも待ても、全部俺が教えた。
たろー、良いイヌだった。
シベリアンハスキーの血を引く凶暴な顔も、舌ベロ出してへらへらしてるのも、可愛げがあったぜ。