うちにはペンギンの形をした革製の貯金箱があって、僕がそれを
「ほんとにペンギンの皮で作ってあるんだぜ」
と言ったもんだから、たったはすっかりそれを信じてる。
ちなみに、キクラゲもペンギンの肉だって言ったことがあって、たったはそれも、いまだに信じてる。
今日たったが、
「パパー、あのペンギン貯金箱は、どうしたの?」
と聞いてきた。
「この家に越してきた年の誕生日に、パパがママからもらった誕生日のプレゼントだよ」
と答えると、
「じゃぁ、大切なものだね」
と。
「そうだよ。あの中には、ママが入れてくれたお金も入ってるんだ」
と言うと、
「え!?じゃぁ、使えないじゃん!」
と言う。
「どうして?」
「だって・・・、ママが入れてくれたの、大切でしょう?」
たった、いつの間にか、良い感性を身につけてるな。
でも、本当に大切なのは、ママが入れてくれたお金それ自体じゃないよ。
確かに、ママが触ったお金も入ってるけど、もうそれがどれかなんてわかりっこない。
それよりも、たったがそう感じる心の方が、僕にとっては大切だ。
でも、いずれそれは、道を閉ざすかもしれんなぁと、漠然と思ったりもした。
「たった、あの中に入ってるお金をそのままにしてたら、お金は死んじゃうんだよ」
「なんで?」
「お金は、使うためにあるのであって、貯めるためにあるわけじゃないんだ。ママだって、貯まった後で何かに使うつもり、パパに、使って欲しくて入れてくれたんだよ。お前だって、欲しいものがあるからお金貯めるんでしょう?」
「うん」
「それ、使わなかったら、意味ないじゃん」
「もっと貯めて、もっと良いもの買う」
「それも、いいかもな。でもね、もう一杯になってるし、パパはそろそろ使おうと思ってるのよ」
「なにに?」
「お前らと、あのお金使ってご飯を食べようと思う」
「どうして?」
「ママは、お前達のことがとっても大切だった。だから、ママが残してくれたお金で、お前達においしいものを食べさせる。ママのお金使ってお前達が喜ぶ。その方が、ママは喜ぶ。そう思わない?」
「そうなの?」
「そうだよ~」
「じゃぁ、ぼく、さわやかのハンバーグが良い!ママと、一緒に食べに行ったよね!」
「けっとくんも~」←けっと
「お前は、一緒に行ってないだろ!」←たった
「いったよー!!」←けっと
「行ったな、2回ほど。うん」
「行ったっけ?ねぇパパ、けっと君も、一緒に行った???」
「行ったよ。2回ね。もっとも、けっとはハンバーグじゃなしに、全然違うもの食べてたけどな」
「そうだっけ?」
「そう。今度行こうか。けっと君の誕生祝いに。もうすぐ誕生日だし」
「じゃぁ明日は!?」
「え”!?普通の日は、ちょっっと・・・・」
ママのお金で良いもの(良いか?ハンバーグだよ・・)食べて、それを自分の血肉にしろ、ガキども。
そうして、ママと共に成長し、思い出に縛られることなく、ママと共に生きろよ。
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